救急車がサイレンを鳴らして走っていく光景は普段よく目にしますが、
サイレンの音が場面によって使い分けられていることは、
あまり知られていないかもしれません。
遠くから来た救急車のサイレンを、よく聞いていると、
近づいてきたときに音が変わったように聞こえます。
音の違いや音量について、
変わったり、調節されているのかが気になったので、
救急車のサイレンの音について調べてみました。
救急車のサイレン 音の違いはなぜ?
救急車は市民から要請があり、
そこへ「緊急走行」で駆け付ける場合、
道路交通法施行令第14条の
「緊急の用務のため運転するときは、サイレンを鳴らし、
かつ赤色の警光灯をつけなければならない」という規定に従い、
「音」と「光」で自らの存在をアピールしながら走行します。
サイレンは基本的に「ピーポーピーポー」で、
「ピー」「ポー」それぞれ0.65秒ずつ、
合計1.3秒でひとつの周期となります。
千葉県の匝瑳市横芝光町消防組合消防本部によると、
救急車のサイレンは、
かつて消防車と同じように「ウーウー」でしたが、
具合の悪い人に配慮した音として「ピーポー」を採用。
東京消防庁では1970(昭和45)年から導入されています。
しかし実際は常に「ピーポー」ではなく、
消防車と同じ「ウーウー」が使われることもあります。
大阪市消防局によると、
赤信号を進むときや交差点を渡る際に、
注意喚起を目的として「ウーウー」というサイレンを使用。
救急隊員によると、
サイレンの切り替えは助手席に座っている救急隊長が、
道路や周囲の状況に応じて臨機応変に行っているといいます。
ちなみに大阪市消防局内では、
「ピーポー」は「ピーポーサイレン」、
「ウーウー」は「ウーウーサイレン」と“そのまま”呼んでいるそうです。
そして、
救急車のサイレンとして真っ先にイメージする
「ピーポーピーポー」の音が出るボタン。
たまに耳にする「ウー」のサイレンですが、
実はこの「ウー」のサイレンが2種類。
そして夜間用の「ピーポーピーポー」のサイレンがあります。
まさか「ピーポーピーポー」に夜間用があるなんて知りませんでした。
そしてたまに耳にする「ウー」のサイレンも2種類あるんですね。
救急車のサイレン 音の違いで住宅モードはあるのか?
「住宅モード」付きピーポーサイレン
「住宅モード」とはその名の通り、
住宅地を走行するための機能です。
救急車でも消防車でもパトカーでも、
そのサイレンは本来、
大音量で周囲の車両や人々にその存在や接近を知らせ、
警告するものです。
しかしその反面、
消防署周辺や、深夜の住宅地などの人々にとっては、
時にそれが騒音公害となります。
特に出動回数の多い救急車のサイレンにおいては度々問題となります。
しかし、緊急車用サイレンの音量は保安基準により定められており、
その音量以下では緊急走行ができません。
「住宅モード」とは、
サイレンの音質に着目し、
ピーポーサイレンの音色を損なわず、音量も最低限確保した上で、
その周波数等を調整し、
耳障りな音が少なくソフトな音質のサイレンを鳴らす機能です。
消防署からの出動時や、閑静な住宅地・夜間の走行など、
地域や状況に応じて、
「住宅モード」サイレンで走行する事により、
周囲環境に優しく、さらに搭乗者にも優しい救急活動を実現できます。
救急車のサイレン 音の違いで音量の調節はされているのか?
①ピーポーピーポーの音が鳴る「ピーポー」ボタン
一番耳にする機会の多い「ピーポーピーポー」の音が鳴るボタンです。
この「ピーポーピーポー」の音は、
救急車が緊急車両として道路を走る場合、
鳴らす事が義務づけられているものです。
音の大きさも90デシベル(音の大きさを表す単位)以上と定められています。
この音を鳴らしていれば法定速度を超えて走行しても問題ないそうです。
(※一般道は80kmまで)
ちなみに電車の通る高架下で100デシベルぐらいなので、
かなり大きい音ですよね。
②ウーー!のサイレンが鳴る「サイレン」ボタン
たまに耳にする「ウー」のサイレンが鳴るボタンです。
先ほども書きましたが、「ウー」のサイレンには2種類あり、
この「サイレン」ボタンでは、低音の「ウー」が鳴ります。
このサイレンは、
交差点や見通しの悪い道路を通過する時に鳴らすサイレンです。
交通量の多い交差点など、
危険が伴う場所で注意を促す為に使うそうです。
ピーポーピーポーの音に「ウー」をプラスすることでさらに目立たせ、
一般ドライバーに注意を促し道をあけてもらう!と言う事です。
③高音の「ウー!」の音が鳴るフットペダル
②のウーの音よりも更に注意を引きたい時に使うフットペダルタイプです。
助手席の足下に設置されていて、
②のウーの音よりも高音のウーの音が鳴ります。
③の違いは音程だけでなく、
②のウーは6秒おきに音程が変わり、
③のウーはフットペダルを踏んでい時だけ、鳴るサイレンです。
なので音程の間隔は自由に調整できます。
④夜間の住宅街用の「弱」ボタン
夜間の住宅街で使うピーポーピーポーの音が鳴るボタンです。
夜間は通常のピーポーピーポーでは『うるさい!』と感じられることも…
そこで住宅モードと言う形で「弱」ボタンがあります。
夜の住宅街では、
救急車の甲高いサイレンではうるさいと苦情が寄せられていたのですが、
ピーポーピーポーの音は法律で90デシベル以上に定められているので、
小さくするわけにはいかない…
そこで注目したのが”音程”です。
通常のサイレンは「シ・ソ♪ シ・ソ♪」の音程です。
サイレンメーカーが様々な音程の組み合わせを試した結果、
たどり着いたのが「ラ・ファ♪ ラ・ファ♪」の音程です。
テストを繰り返した結果、
この音程が最も人にストレスを感じさせない音程と判明したそうです。
あとがき
救急車には4種類のサイレンのボタンがあり、
状況に応じて押し分けられていました。
車を運転する際に遭遇する事も多い救急車ですが、
そのサイレンの音の違いをきちんと理解する事で、
よりスムーズに道をあける事ができます。
単なる雑学ではなく、
安全の為にもしっかり覚えておきたいですね。
それにしても、
患者さんを安全に素早く搬送する為に、
4種類ものサイレンを使い分ける救急車って、
凄いなと思いました。