居酒屋や旅館などの玄関に、
焼き物のたぬきの置物が置いてあるのを見たことはないでしょうか?
たっぷりした独特な体型と愛くるしい真ん丸の目。
なぜか右手には通い帳と、
左手には大きな徳利を持っていたりして。
だれもがイメージするこのたぬきの置物といえば、
そう信楽焼のたぬきなのです。
たぬきは日本人にとって、
カチカチ山などのおとぎ話にもでてきたり、
たぬき寝入りなどのことわざにも使われるほど、
昔から馴染み深いものですね。
今回は、そんなたぬきをモチーフにした焼き物である、
信楽焼のたぬきについてご紹介したいと思います。
信楽焼のたぬき 置き場所にはどんな意味があるのか?
信楽焼とは、
現在の滋賀県甲賀市信楽で作られた焼き物のことです。
信楽は、
『日本六古窯(にほんろっこよう)』の一つに数えられ、
中世から現代に至るまでその生産が続いている、
国内を代表する焼き物の産地です。
(他の産地には、越前・瀬戸・常滑・丹波・備前があります。)
粘りが強くコシのある土を使ったその作品は、
「大物づくり」に適している一方で、
「小物づくり」にもその繊細さを表現できるといった幅広さが特徴です。
そういったことから、
手に乗るくらいの小さなものから、
人の背丈くらいの大きさのものまで、
信楽焼きのたぬきの種類があるのもうなずけますね。
お店や一般家庭の玄関などで見かけることのあるこのたぬき。
『金運』『開運』『魔除け』など様々なご利益があるといわれています。
『たぬき=他抜き』といった語呂合わせから、
商売をされる方にとって重宝されることになったようです。
信楽焼きのたぬきが世間に大きく注目されるようになったのは、
昭和26年11月15日に行われた昭和天皇による信楽への行幸です。
このとき、多くの信楽焼きのたぬきに旗を持たせて、
沿道に並べて歓迎したところ、
陛下は大変感激されその光景を元に歌を詠まれたほどでした。
『幼などき 集めしからに懐かしも しがらき焼きの たぬきをみれば』
その歌碑は、
滋賀県の信楽にある新宮神社に今も見ることができます。
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信楽焼のたぬきが八相縁起の縁起物と言われる由来やご利益は?
信楽焼きのたぬきは、
わらべ歌のモチーフがそのイメージの元となっているそうです。
『雨のしょぼしょぼ降る晩に 豆狸が徳利もって酒買いに…』
信楽焼きのたぬきは、編み笠をかぶっていますよね。
これは、この歌から雨が降っていたからと想像できます。
また、徳利をもっていたのもお酒をこれに入れてもらうた
めだったと思うとわかりやすいですね。
なんとなく憎めない信楽焼きのたぬきには、
そのからだの特徴や持ち物から、
『八相縁喜』と呼ばれる8つの想いが込められています。
☆信楽焼きのたぬきの『八相縁喜』
笠:突然の災難から身を守る
顔:常に愛想よく過ごす
目:何事にも気を配り正しい判断をする
通い帳:世を渡るには信用が第一
徳利:飲食には困らず徳を持てるよう努める
腹:冷静さと大胆さをもつ
金袋:お金を自由に使えるくらいの金運
尾:終わりは何事もしっかりと
八相とは、人を判断するとき、
普段の癖や行動、行いの傾向、心の善し悪しなどが、
相(人相)に現れることを言います。
貴相… 尊い地位に上るべき人相。
福相… 福々しい顔つき。
威相… 威厳のある相。
寿相… 長寿の相。
貧相… 貧乏そうな人相。
孤相… 孤独の相。
悪相… 不吉な兆しの相。
夭相… 短命の相。
信楽焼のたぬきのほかにも、
縁起物の置物が、信楽焼では有名です。
☆信楽焼の風水ふくろう
信楽焼の風水ふくろうは、フクロウを不苦労という字にあてて、
商売や金運、開運、勝負運などにご利益があります。
☆信楽焼のカエル
ヒキガエルのことを福蛙と呼ばれることから、
これを『福かえる』として、
八相をそなえている縁起物とされています。
皮膚:災難を避ける保護色の鎧。
腹:大肚に構えた腹にはへそがなく、落雷予防。
口:火の災いをパクリと呑み込み火災予防。
子蛙:常に親の責任を負い、子はしっかり親に従う。
信楽蛙の置物には頭や背中に子ガエルをのせているのがあります。
前足:しっかり構えた足は 磐石に構えた脚は威風堂々、礼節を知る。
後足:屈強な後ろ足で、いざという時は、跳躍前進せよ。
食物:毒蚊・毒虫を食べ、害虫撲滅・無病息災。
冬眠:断食、耐寒の時期に心身修養せよ。
信楽焼のたぬきの置き物 ご利益のある置き場所はどこ?
信楽焼のたぬきの置き物は、
商売繁盛の縁起物という意味では、
やはり基本的には玄関先がお勧めです。
これから巡ってくる運気を上げてもらう意味でも、
何よりお店に入る前に、
あのたぬきの表情をみると朗らかな気分になりますよね。
また、一般の家庭でも、たぬきの置き物は、
小さなものであれば玄関の靴箱の上や、
家族が集まりやすいリビングなどに置いて、
皆の運気をたぬきに上げてもらいましょう。
大きさもさることながら、
そのデザインも定番といわれるものから現在は、
様々なものが手にはいるようになりました。
これを機会に、
頼もしいたぬきのご利益にあやかってみてはいかがでしょうか?
信楽の町では、毎年11月8日を『たぬきの日』としています。
この『たぬきの日』を中心に、
11月中は、いろいろな楽しいイベントが開催されています。
あとがき
たぬきの置物は、いつ見ても愛嬌があって、
見ている人を幸せな気分にしてくれます。
このたぬきの置物に、
昭和天皇との経緯があったとは知りませんでした。
また、タヌキの置物だけでなく、
信楽焼の素朴な色合いや肌触りは、
生活の中にやわらかい雰囲気をもたらしてくれます。