いろいろなテクノロジーが進化した現代でも、
いまだに解明できていない地球の謎があります。
地球科学最大の謎
地磁気逆転地層とチバニアンとは何なのでしょうか？
千葉県市原市に、その地磁気逆転が記録された
『千葉セクション』があります。
千葉県市原市の養老川沿いにある地層『千葉セクション』には、
研究者たちが解明を目指す 地磁気逆転が克明に記録されています。
2020年には、774万年前～12.9万年前にあたる地質年代区分の、
『国際境界摸式層断面ポイント』(GSSP)に認定され、
同年代区分が『チバニアン』と命名されました。
チバニアンは、私たちに何を教えてくれるのだろうか。
チバニアンは、千葉県市原市養老川の右岸にあり、
地層の露出面を見るとカラブリアンとの境界である
幅1～3㎝の白尾火山灰層が確認できます。
チバニアンとは簡単に言うと何？
海底から隆起して誕生した『千葉セクション』
ここは80万年前から75万年前頃の、
水深500m以上の海底が隆起して現れた地層です。
実は、
100万年前以降の比較的新しい深海底の地層を地上で見られるのは、
世界的に見ても房総半島くらいしかありません。
3つのプレートが沈み込む複雑な地下構造のため、
隆起のスピードが非常に速いのです。
ここは千葉セクションと呼ばれ、
研究対象として非常に優良な地層でした。
プランクトンや花粉などのさまざまな化石から、
当時の環境変動を推測できるだけでなく、
77万年前に起こった最後の地磁気逆転と、
その前後の記録も残されているのです。
この地磁気逆転の記録が、
2020年
地質年代に日本の地名を初めて刻むきっかけとなりました。
国際地質科学連合は、
千葉セクションを77万4000年前から始まる中期更新世と、
その前の期のカラブリアンを分けるGSSPに認定しました。
今回のように、GSSPに認定されるには、
地磁気逆転が記録されていることが条件でした。
千葉セクションには、
伊豆半島の火山が噴火した際に飛散した火山岩が多く堆積していて、
そこに含まれる磁鉄鉱から、
明確な記録を得られたことが決め手となりました。
そして、千葉セクションの『チバ』を用い、
ラテン語で時代を意味するように『チバニアン』と名付けたのです。
もう一つ、GSSPに認定されるためには、
視認可能な層が存在することも必要でした。
幸福なことに、千葉セクションには、
『白尾層』と呼ばれる視認可能な火山層がありました。
かつて長野県と岐阜県にまたがる古期御嶽山の大噴火で、
堆積した地層が、
77万4000年前のカラブリアンとの境界の年代になったのです。
千葉セクションとチバニアン
地球には大きな磁石のような磁場(地磁気)があります。
方位磁針のＮ極が北を指すのは、
北極がＳ極の性質を持つためなのです。
しかし、地球の約46億年の歴史の中では、
Ｎ極とＳ極の方向が一定ではなく、
逆転していた時期があったのです。
地磁気の影響は、宇宙空間にまで及び、
太陽からの放射線や太陽風などから地球を守る働きをしているのです。
もし、
地磁気逆転によって地磁気がさらに弱まるようなことがあれば、
人間社会に何らかの影響があることは十分考えられるのです。
地磁気の方向を分析するには、地層内の磁鉄鉱がカギとなります。
火山岩に含まれる磁鉄鉱は、磁石のように磁性を帯びた粒子からなり、
地磁気と同じ方向にＮ極が向いています。
地層から年代ごとに採取したサンプルを、
超電導岩石磁力計という特殊な装置で測定し、
地磁気の方向を分析することで、
逆転現象の年代や状況がわかるのです。
千葉セクションに近づく地磁気逆転の時期は？
ここで気になるのが、
次にいつ地磁気逆転が起こるかということです。
地磁気逆転の周期はランダムなので、予想が難しいのですが、
ここ360万年間を見ると、
25万年に一回程度起こってきました。
そして、最後に起きたのが77万年前なので、
永い間逆転していないことになります。
直近の1万年くらい前から地磁気は急激に弱くなっていますが、
それが逆転現象の前兆なのかどうかについては、
今現在研究が進められているところです。
このような懸念を払拭するにも、
チバニアンの研究が役に立つはずです。
今後は、地磁気逆転現象の直前に、
何が起こったかを調べるために、
チバニアンに刻まれた地球の声が、
丁寧に解明されることを待ちましょう。
あとがき
私たちが住んでいる日本という土地にも、
何万年という歴史があって、
チバニアンの時代には原人がいたといわれています。
氷期と間氷期を繰り返していたその時代に、
ご先祖様はどのような生活を営んでいたのか、
気になってきました。
