『臥薪嘗胆』
画数の漢字ばかりの四文字熟語、
読み方も難しく、
読める人も少ないのではないでしょうか?
新聞などでこのような難しい熟語を見つけると、
何となく前後の意味合いで理解してしまいがちですが、
正しい意味かどうか、確かめないといけません。
読み方がわかり、意味も理解できれば、
ひとつ賢くなったようで、嬉しくなります。
これはチャンスだと思って、
難しい四文字熟語に挑んでみましょう。
『臥薪嘗胆』の意味、
きっと誰かに教えたくなりますよ!
臥薪嘗胆の読み方と本来の意味は?
「臥薪嘗胆」の読み方は「がしんしょうたん」です。
「がしんしょうたん」と読むのですが、
読み方を知っても、意味までは分からないです。
日常では使われない漢字も含まれているので、
最初は読めない方も多いのではないでしょうか。
「臥」は横に寝るという意味があります。
「薪」はまき、たきぎの意味です。
「嘗」は舐める、
「胆」は肝臓のことを指します。
要約すると、
「薪の上で横になって苦い肝臓を舐める」ということになります。
しかしこれでは何を意味しているのか、
さっぱり分かりませんね。
意味不明で更に分からなくなりますよね。
臥薪嘗胆の意味とは・・・
将来の成功を期して苦労を自分に課してそれに耐えること。
又は復讐を心に誓って、辛苦すること。
この二つが大きな正しい意味となります。
臥薪嘗胆のまず臥薪とは、
薪がたきぎを表す漢字で臥とは伏し寝を表す漢字になります。
二つ合わせて薪の上に伏し寝すること表しています。
嘗胆とは、
胆が苦い肝を表し、嘗が舐めることを表す漢字になります。
この二つで苦い肝をなめるという事を表しています。
薪の上で寝て苦い肝をわざわざ嘗めてまで、
何かを成し遂げようとした事から、
この意味の言葉になったということですが、
理解しにくい意味ですね。
復讐を成功させるためには、どんな苦労に耐えるという意味なのです。
他にも中国の故事成語によると、
紀元前5世紀、
呉と越の国家間の戦争に由来するとのことで、
「臥薪嘗胆」は、夫差が父の敵を討るべく、
越に破れた屈辱を忘れないためにした行動が由来となっています。
そこから転じて、
「屈辱・仇をはらそうと長い間苦労・苦心を重ねること」が、
「臥薪嘗胆」の本来の意味となります。
また、
「将来の成功を期して長い間苦労を重ねること」という意味もあり、
現代ではこちらの意味で使われることが多くなっています。
「敵を討つ」というのは物騒ですし、
時代の流れとともに意味が変わったのかもしれません。
「苦労はやがて実を結ぶ」ということから、
「臥薪嘗胆」を座右の銘にされる方も多いようです。
ですから、「苦労はやがて実を結ぶ」という意味なのですね、
これなら分かり易いです。
「臥薪嘗胆」「がしんしょうたん」の意味は、これで分かりましたね。
座右の銘にも使われる臥薪嘗胆の由来は?
・「臥薪嘗胆」の由来は闔閭の息子夫差の故事
「臥薪嘗胆」という言葉は、
元々は中国の故事から来ています。
「臥薪嘗胆」の由来となった故事は、
「十八史略(じゅうはっしりゃく)」というもので、
その中の「春秋戦略(しゅんじゅうせんりゃく)」の一文が、
「臥薪嘗胆」を表しています。
春秋戦略には、
呉の国を治めていた王「闔閭(こうりょ)」と、
その息子「夫差(ふさ)」が登場し、
「臥薪嘗胆」は闔閭の敵を取ると決めた夫差の物語の一部です。
・現代語訳のあらすじでも夫差の志が記されている
春秋時代、王である闔閭は、戦いに敗れて戦死します。
息子の夫差は、父の敵を取ることを決めました。
夫差は敵を討つという強い気持ちを忘れないように、
毎日硬い薪に寝ることにします。
夫差は薪の上で寝る体の痛みで、
復讐の気持ちを絶やさないようにしたのです。
この故事から「薪の上に臥す」が「臥薪」、
「肝のような苦みをなめる」という意味で「嘗胆」、
これらを合わせて「臥薪嘗胆」となったと言われています。
詳しく言うと…
「臥薪嘗胆」の由来は、
中国の春秋戦国時代まで遡ります。
主な登場人物は次の2名です。
また「呉」および「越」という国が出てきます。
・呉の国王・闔閭(こうりょ)
・闔閭の息子・夫差(ふさ)
ある日、呉は長年の屈辱を晴らすために、越へ進軍しますが、
返り討ちに遭ってしまい国王である闔閭は重症を負ってしまいます。
その後、闔閭は、息子である夫差を後継者に任命し、
「敵を討ってくれ」という言葉を残して世を去ります。
その意思を継いだ夫差が、
「薪の上で横になり、苦い肝臓を舐める」ことを習慣にしたとされます。
「薪」の上で寝るのは苦痛が伴い、
また「肝」は大変苦いことで知られていますが、
夫差は、常に自らを苦しめることで、
戦いに破れた屈辱を忘れないようにしたのです。
これが「臥薪嘗胆」の由来となります。
・日本における臥薪嘗胆というものもありました。
日本にまつわる「臥薪嘗胆」をご紹介します。
戦時中のある時期、
日本は「臥薪嘗胆」を国のスローガンとしていました。
発端は、日清戦争後の下関条約からです。
そこで、日本は中国にある遼東半島を割譲しますが、
直後にロシア・ドイツ・フランスが日本に対して、
「遼東半島を清に返還せよ」と勧告。
日本は受諾します。
露・独・仏の理由は、
「日本が遼東半島を持つことは、東アジアの平和を乱す」
というものでした。
日本は、やがて、ロシアとは日露戦争で戦うことになりますが、
遼東半島の返還は屈辱と捉えて、
国民の敵対心を煽るために、
「ロシアの報復を忘れないために耐え忍ぶ」という、
「臥薪嘗胆」のスローガンが掲げられました。
臥薪嘗胆という言葉の使い方の例文は?
日常会話などではあまり使われない言葉ですが、
一般的に「臥薪嘗胆」は、
「長い間苦労を重ねた末に成功した」、又はその進行形で使います。
使う際には「長期間努力・苦労した」というのがポイントです。
「短い間努力した」という時に使うのは誤りです。
それでは、例文をご紹介します。
1.私は臥薪嘗胆の末、病に打ち勝った
2.臥薪嘗胆の思いで勉強に励んでいる
3.今は臥薪嘗胆だ、と自分に言い聞かせている
4.臥薪嘗胆すること10年、ようやく実を結んだ
「臥薪嘗胆」という言葉には、いくつかの類義語があります。
「捲土重来を期す(けんどちょうらいをきす)」もその一つです。
「捲土重来を期す」の「捲土重来」とは、
土埃が舞い上がり、収まってもまたじきに再び土埃が舞う、
という状況を表した言葉で、
「上手くいかなかったことが、再び勢い良く盛り返す」という意味です。
「期す」とは「心に誓う」という意味なので、
合わせると、
「ここからまた盛り返すことを決意する」という意味となります。
「臥薪嘗胆」は「目標とするものを目指して、そのために耐える」、
「捲土重来を期す」は「目標とするものを目指して奮起することを誓う」
という意味なので、意味自体は異なりますが、
目指すものを諦めずに進み続けるという意味では似た言葉と言えます。
「辛酸をなめる」は労力を費やすこと
「臥薪嘗胆」の「嘗胆」の部分に注目した場合の類語もあります。
「辛酸(しんさん)をなめる」は、
「苦しく、つらい目に遭う」「苦労をする」という意味です。
辛いものや酸っぱいもの、という味覚に、
うれしくないものを味わってきた、ということを指す言葉で、
苦労や災難を比喩しています。
自分が経験した苦労や不幸を「辛酸をなめた」と表現することで、
必要以上に自分の不幸を強調することなく表すことができます。
あとがき
「臥薪嘗胆」についてお話しさせて頂きました。
「がしんしょうたん」と読み、
本来は、
「復讐やかたきを討つためにあらゆる苦心に耐えること」
といった意味です。
現在では、
「目的達成のために苦労し努力すること」
といった意味でも使われていて、
座右の銘にも、よく用いられています。
人生において、
「臥薪嘗胆」しなくてはならない場面は必ず遭遇します。
「しんどい」「苦しい」などと思うより、
「臥薪嘗胆だ」と思うと、
なんだか少し前向きになれるような気がします。
言葉を知るほど、人生は豊かになりますね。