結婚を機に、旦那の実家がある関西に住み始めてはや5年。
その当時に購入した鋳物のたこ焼き器は、
今では油が程よく馴染み、元気に現役で頑張ってくれている。
「明石焼きっていうけど地元じゃ玉子焼きなんだよなぁ…」
テレビで明石のことを紹介しているらしい。
越してきた自分にとっては流せる話でも、
地元っ子の旦那にとってはこだわるところ?
そういえば、
たこ焼きはこれまで何度も作ったことあったけど明石焼きは一度もない。
食べたことはあったけど、私が知っているたこ焼きとどう違うんだろう…
「そうそう、出汁につけるのがポイントなんだよね!」
旦那よ。
君の地元愛はよくわかった。
初耳の話もあったりして、それはそれとして興味が沸いてきたけど、
私はそろそろTVを静かに見たいです…
明石焼きとたこ焼きの違いは何?
たこを扱っていて二つとも同じように焼いているのですが、
見た目も食感も食べ方も、全く別物。
それではその違いをひとつひとつ見ていきましょう。
まずは、形から…
明石焼きは、丸ではあるものの扁平形。
一方たこ焼きはおなじみの球型。
作る道具はというと…
明石焼きは、熱伝導率のよい銅製で、深さが浅目。
たこ焼きで良く見る金属製の千枚通しは使わず、
傷がつかないよう菜箸などを使います。
たこ焼きには、鉄製の鋳物が使われることが多いですね。
材料はというと…
明石焼きは、
卵が主で小麦粉のほかに「じん粉」が使われています。
じん粉は小麦粉のでんぷん質のみでできているもので、
熱を加えても硬くなりません。
これを使うことで、
あのふわふわの食感が生まれます。
たこ焼きのほうは、小麦粉が主ですね。
中に入れる具材はというと…
明石焼きは、基本たこだけ。
たこ焼きは、たこ以外にも天かすや紅ショウガ、
キャベツやネギが入りますね。
お店で提供されるときはというと…
明石焼きは、とくに何も乗っておらず、
小さなまな板のようなものに乗せられて出てきます。
そして冷たい出汁。
たこ焼きはというと、色々なソースや青のりなんかがかけられて、
舟皿と呼ばれる容器に入っていることが多いでしょうか。
食感はというと…
明石焼きは、やわらかくふわふわです。
たこ焼きのほうは、外はカリッとして、中はふわトロッ!
というのが流行りでしょうか。
食べ方はというと…
明石焼きは、熱々の状態で、
なんと冷たい出汁につけて食べます。
ここが大きくたこ焼きと違うところかもしれません。
もともと焼きたての明石焼きの温度を下げるためにつけていたようですが、
最近は暖かい出汁も提供されています。
たこ焼きは楊枝で指してそのままいただきますよね。シンプルです。
明石焼きのルーツとなった明石玉とは?
明石焼きのルーツには、
かんざしや首飾りに使われる装飾品の、
「明石玉」と呼ばれるものが深くかかわっていたってご存知でしたか?
今でいうアクセサリーとして、
本物珊瑚とは違って安価で人気を博した模造珊瑚の一種です。
「明石玉」とは、いったいどんなものだったのでしょうか?
江戸時代の末期から明治の時代まで、
兵庫県の明石で作られてこの明石玉。
明石に滞在したべっこう職人が、
冬場に卵が割れて卵白が固まっていたことをヒントに、
考案されたといわれています。
卵白で固めた米粉に、水牛の角などを貼り着色したもの、
または鉛の芯が入ったツゲの木を原型に、
卵白を塗ったり、硝石や滑石の粉を主原料とした場合など、
様々な手法があったそうです。
大きさとしては1.5cm程度のものが多く、
色は赤を中心に、実際の珊瑚にはない藍色や紫色のものも作られていました。
当時は、中国や朝鮮にも輸出され、
プラスチックが主流となるまでの間、特産品として大いに隆盛を誇りました。
明石焼きの歴史について
明石玉を作る際に大量に使われた卵白。
反面残っていく卵黄。
これを使わない手はないというところで、
地元でとれたたこを入れて世にでたのが明石焼き=玉子焼きなのです。
ちなみに明石玉を作るための道具として使われていたものが、
現在も残っていますが、
明石焼きを作るための銅板とその形はよく似ています。
江戸時代の末期ごろから食べられており、
全国的になじみのあるたこ焼きのほうが、
むしろこのあとに生まれたといわれているのは意外に感じますね。
それから、玉子焼きという言い方ですが、
うちの旦那だけに限ったことではありませんでした。
地元の明石市および東播磨、神戸市西部以外の地域では、
卵を調理した世間一般的な卵焼きと区別するために、
明石焼(あかしやき)と呼ばれることが多いとのことです。
もしこれらの地域に訪れることがありましたら、
少し気にして見ていただくと、
地域差がわかって面白いかもしれません。
あとがき
いかがだったでしょうか?
明石焼きについて、たこ焼きとの違いや独特な食べ方、
また、そのルーツが当時流行したアクセサリーを作る上で、
余ってしまった材料にあったなんて驚きでした。
食べ物を無駄にしないという気持ちが、
今も続く明石の名物につながっているかと思うと、
なんとも感慨深いものですね。
我が家でも明石焼きを作ってみたくなってきたけれど、
まずは道具(銅板)からかなぁ…