蜃気楼は、
その原理が明らかになる前は、
妖怪が起こす不思議な現象として捉えられていました。
「吉兆」の象徴として好まれていたそうです。
蜃気楼の「蜃」は、海の中に住む妖怪と言われていました。
「蜃」が妖しい「気」を吐き出して
「楼(高い建物)」を出現させると考えられていました。
現在では、蜃気楼、逃げ水、陽炎の原理や仕組みが分かっています。
では、
それぞれの違いとはどのようになっているのでしょうか。
蜃気楼と逃げ水はどう違う?
「蜃気楼」とは、上層と下層の空気の温度差によって、
見たことのない景色が上下に伸びたり、
引っくり返ったりして見える現象です。
冷たい空気の密度は、暖かい空気の密度よりも大きいので、
光は温度の異なる空気の境界で屈折します。
蜃気楼は、空気の密度に違いが生じ、
光の屈折率が連続的に変化することで生じます。
蜃気楼は、暖かい空気と冷たい空気の位置関係によって、
「上位蜃気楼」と「下位蜃気楼」の二つのタイプに分けられますが、
通常は「上位蜃気楼」のことだけを指します。
上位蜃気楼・・・
低い所に冷気層が、その上に暖気層がある場合は、
光が凸状に進みます。
光が凸状に屈折して進むと、
実像の上に虚像が反転して見えます。
これを上位蜃気楼と呼びます。
上位蜃気楼は、富山湾や琵琶湖など、
全国でも限られた場所でしか見ることができません。
また、4月から7月までと限られた期間でしか見られません。
下位蜃気楼・・・
低いところに暖気層が、その上に冷気層がある場合は、
光が凹状に進みます。
光が凹状に屈折して進むと、
実像の下に虚像が反転して見えます。
これを下位蜃気楼と呼びます。
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風がなく晴れた暑い日に、
アスファルトの道路などで、
遠くに水があるように見える現象があります。
近づいてもその場所には水はなく、
さらに遠くに水が見えます。
水が逃げていくように見えるので、
この現象は「逃げ水」と呼ばれています。
アスファルトの道路が日射などによって熱せられ、
路面温度と気温の差が大きくなることで起こる、
下位蜃気楼の事を「逃げ水」と言います。
暖かい海面上に冷たい空気がある場合に、
島が宙に浮かんでいるように見えることがあります。
これを「浮島現象」と呼びます。
砂漠に見られるオアシスの蜃気楼も、同じタイプの下位蜃気楼です。
陽炎とはどんな気象現象?
熱せられた空気が、
ゆらゆらと揺れているように見えるのが陽炎です。
これも、空気の温度差(屈折率の差)によって起こります。
暖気が立ち上ることにより、
景色が不規則に揺らいで見える現象です。
空気は熱せられると、軽くなって上昇します。
それにより、
地面から空に向かって空気が流れます。
熱せられて密度が小さくなった空気が風などによって分布され、
そこを光が通過することで、光は不規則に屈折します。
通過する光が不規則に屈折すると、
前方の景色がぼやけて見えたり、歪んで見えたりします。
春先で特に起こりやすい現象です。
また、「焚き火」などによっても起こります。
陽炎とは、
光線の向きが様々な方向に変化することによって起こる現象のことです。
蜃気楼 逃げ水 それらの仕組みはどうなっているの?
本来、光は大気の中を真っ直ぐ進みます。
しかし、
大気の密度が異なれば、光は真っ直ぐに進まなくなってしまいます。
私たちの目は、
光が真っ直ぐに進んでいるものだと判断してしまうので、
やってきた光の直線上に物体があるように見えてしまいます。
しかし、途中で光が屈折してしまうと、
本来は考えられない場所に、
物体を見ているような現象が起きてしまいます。
上位蜃気楼は、
上側にあるはずのないものが見える現象です。
これは、下側に冷たい空気、上側に暖かい空気がある時に、
光が次第に冷たい空気の方に向かって屈折していくことで、
本当は下にあるものが上にあるように見えてしまう仕組みです。
下位蜃気楼は、
下側にあるはずの無いものが見えてしまう現象です。
これは、下側に暖かい空気、上側に冷たい空気がある時に、
光が冷たい空気に向かって屈折しています。
逃げ水は、下位蜃気楼であり、
夏によく見られる現象です。
夏の晴れた暑い日には、
アスファルト路面近くの空気が熱せられ膨張し、
屈折率が変化することから光の進路が曲げられることで生じます。
また、陽炎は、熱によって起こる上昇気流などによって、
光の屈折が不規則に変化することで発生する小規模なものです。
あとがき
神秘的な蜃気楼は、
とても魅力的に感じます。
特に上位蜃気楼は、限られた期間に、
限られた場所でしか見ることができません。
今までは何となく不思議な現象というイメージでしたが、
原理が分かった上で、
石狩湾やオホーツク海、富山湾、琵琶湖など、
蜃気楼が有名な場所を訪れてみたいと思います。