2020年の社日祭はいつ?社日の読み方や意味の由来は何で社日祭にお供えするものは?

スポンサーリンク

社日は、あまり注目されない日と言えますが、
社日(しゃにち)と読みます。

社日は雑節の一つで、
生まれた土地の神様・産土神(うぶすながみ)をお祀りする日のこと。

雑節の一つなのでカレンダーなどには記載されているものの、
馴染みの薄い方も珍しくはない年中行事と言えるのでは無いでしょうか?

  

2020年の社日祭はいつ?

彼岸と同じく一年の間に春と秋の二度あり、
春の社日を春社・秋の社日を秋社と呼び分けることもあります。

社日は土地に関係する神様をお祀りすることから、
特に農業との関わりが深い祭日とも言えます。

年に二度あるのも、
種蒔き(田植え)・収穫という農業で重要視されていた日と連動していますね。

このため社日は土地の神様をお祀りする日ではありますが、
五穀豊穣を願う・収穫に感謝するという意味合いが強い日でもあります。

社日はいつ?

社日は春社・秋社と年に二回あり、
それぞれ春分の日と、
秋分の日に最も近い、
“戊(つちのえ)の日”と定義されています。

戊は十干と呼ばれる「甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸」という、
10の要素を使った数の数え方の5番目。

最後の癸まで行くと最初の甲に戻る形でループするので、
戊と戊のちょうど真ん中に春分・秋分が入ってしまうこともあります。

この場合は、
春分・秋分の瞬間が午前中なら前の戊、
午後なら後の戊とすることが多いようです。

・2020年の社日
春社:3月16日
秋社:9月22日

・2021年の社日
春社:3月16日
秋社:9月22日

となります。

社日の読み方や意味の由来は何?

社日は「しゃにち」と読みます。

・社日の成り立ち・歴史

社日は、古代中国で始められた風習です。

古くは土を司ると考えられていた“戊の日”に、
土地神様を祀った「社」で、
近隣の人々が集まって皆で飲食をするという行事だったようです。

ちなみに、
日本では色々な場面で使われている「社」という文字についても、
諸説ありますが、
古代中国では、
大地を神格化したもの・それを祀る場所を意味する文字だったと考えられています。

そこから派生して、
神社など神聖な場所を意味するのに使われたり、
組合や団体・世の中を表現するにも使われるようになったんですね。

奈良から平安自体ころには、
中国から日本には様々な文化や風習が伝えられた時期です。

社日もその一つで、
土地の神様を祀るという考え方が、
日本古来からの民間信仰に近かったことから広く受け入れられました。

日本には古くから自然信仰と祖霊信仰と呼ばれる思想が定着していました。

これらは習合されている部分もありますし、
様々な見方がなされていますが…

祖霊信仰には人々(の霊魂)は一体化して歳月と共に子孫や家を守る神様になり、
さらにお祀りされて歳月を経ると、
土地を守る神様にランクアップしていく、
というような考え方があったという説があります。

また山の神や田の神という自然信仰系の神とされる概念についても、
祖霊が姿を変えたものという思想があるそう。

山の神は春になると田の神の姿をとって里に降り、田畑の作物を実らせ、
秋になると山へお戻りになるという考え方もあります。

こうした信仰から、
古代日本の信仰は多神教であると同時に、
様々な神々は、
祖霊の持つ顔の一面という見方をしていた可能性があるという見解もあります。

かなり乱暴な括りになりますが、
自然信仰と祖霊信仰は、
全くの別物ではなくて混ざり合っていると言えそうですね。

ともあれ、元々日本各地には、
自分達の土地を守ってくれる神様がいるという考え方はありました。

このため中国から伝わった社日の風習は受け入れやすく、
日本の土地神信仰と融合した形で全国的に祝われるようになります。

田の神・山の神の信仰とも融合して、
春社は山から神様が降りてくる日、
秋社は神様が山に帰る日としている地域もあります。

ここから、
山からやってきた神様に豊作をお願いする=春社は豊作祈願、
山に帰る神様に
今年の収穫を感謝する=秋社は収穫感謝、
という意味を持つようになったと考えられます。

・十干と「戊」について

社日は土を司る“戊の日”に行なわれる行事ですが、
この戊というのは十干(じっかん)の一つです。

十干は古代中国で考案された
「甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸」の10種類の要素を使って、
数を数えたり、方角などを表す方法です。

日本でも古くから使用されており、
現在でも「甲乙つけ難い」という表現や、
契約書のなどの略称として甲・乙・丙が使われていますね。

十干は陰陽五行説の考え方と対応しています。

2つずつ木・火・土・金・水を象徴し、
さらに前半が陽・後半が陰と別れています。

五行説は、
万物は木・火・土・金・水の5種類の元素で構成され、
この5つの元素は互いに影響を与え合うことで、
世界は変化・循環しているという考え方が基本となっています。

日本もこの五行思想の影響を強く受けているため、
古い時代には十干を重用し、
陽を兄・陰を弟という風に置き換えることでさらに分かりやすく表記しています。

・甲(こう)=木の兄(きのえ)

・乙(おつ)=木の弟(きのと)

・丙(へい)=火の兄(ひのえ)

・丁(てい)=火の弟(ひのと)

・戊(ぼ)=土の兄(つちのえ)

・己(き)=土の弟(つちのと)

・庚(こう)=金の兄(かのえ)

・辛(しん)=金の弟(かのと)

・壬(じん)=水の兄(みずのえ)

・癸(き)=水の弟(みずのと)

ちなみに、
この十干と十二支と組み合わせると“干支(えと)”になります。

私達は干支と言うと十二支をイメージすることの方が多いですが、

本来は八百屋お七の伝説などで登場する「丙午」のような、
十干と組み合わせて表記されるものを指す言葉なんです。

十干十二支で数える“干支”は60年で一巡することから、
60歳の還暦が「干支が一周したお祝い」となっています。

十干の本義は、自然の生命サイクルであるとも言われていますが、
時代と共に五行思想と融合したことで、
火や水などの属性的な意味合いを持って捉えられるようになりました。

有名なところでは「丙午」は、
両方ともに五行思想では“火”を意味することから、
火事が多いという迷信がありますね。

この考え方で見ると、
戊は土の兄=土の陽気を備えた日であると考えられます。

陰陽の考え方は複雑でややこしいのですが、
大雑把に言うならば“光(太陽)”や“上昇”などを司るのが陽。

このため、土の気が上り調子な「戊(土の兄)」の日が、
土地を守護してくれる神様=土の神様をお祀りするに相応しい日として、
選ばれたと考えられています。

土いじりを避けるという地域も…

五行要素の中で、“土”が司る期間とされている土用のように、
全国各地にというわけではないですが、
社日についても「土を動かしてはいけない日」と見做されることがあります。

土用と同じ様に、
農作業や土に触れる仕事が禁忌とされていた地域もあります。

社日は神様を祭る日であり、
この日に土をいじると神様の進行を妨げることになると考えられていたそう。

そのほか、
神様の頭を掘る・神様の体に傷をつける事になると伝える地域もあるようです。

民間伝承・信仰としてそういった考え方があったことも否定できませんが、
社日に土仕事を避けよという話は、
別のニュアンスもあると考えられます。

神様をお祀りする日で、物忌をしたり、
地域と人とお祭りを行うための準備をしたりと忙しかったという事が1つ。

皆で心を一つにして神様と向き合いましょうという感じです。

さらに、
春社は種蒔き前の豊作祈願・秋社は収穫感謝祭という面もありますから、

・大事な行事を蔑ろにして田植えをしない
・真面目に働いて収穫祭までには収穫を終えよう

という戒めであった可能性もあるように思います。

田植えなどは、近所と足並みをそろえて行うことが一般的でしたし、
日本人は“和”に重きを置く民族でもあります。

社日祭にお供えは何をする?

特徴的な社日祭としては、
福岡県筥崎宮の「お潮井取り」がよく紹介されています。

こちらは筥崎宮の御神域内にある箱崎浜の真砂を頂く行事です。

真砂は竹で編まれた「てぼ」と呼ばれるかごに入れて玄関に備え、
外出時などに振りかけることで身を清めて災難除けを願うそうです。

そのほか農作や虫よけを願って田畑にまくこともあるようです。

また、群馬県大泉町の社日稲荷神社では、
社日祭に「探湯神事(湯加持行事)」と呼ばれる特殊神事が行なわれています。

こちらは神前に熱湯の入った大釜を備え、
小笹の束を浸して湯を全身に浴びます。

元々は人心の善悪を探る裁判的な意味合いも会ったそうですが、
現在は豊作祈願や家内安全・厄難除けを願う神事として行なわれているそうです。

そのほか、
春の社日には餅つき・秋の社日には実った稲を供えるという地域もあります。

・春の社日に酒(治聾酒)を呑むと耳が良くなる、
・春の社日に鳥居を7つくぐると中風予防になると

伝えられている地域もあるようです。

ちなみに社日の行事食は基本的にはありません。

神様への供物として利用したお酒・米・餅を食べていたと考えられますし、
一部「おはぎ」をお供えする地域もありますが、
地域差が大きいこともあり定番と言える縁起物や料理はありません。

あとがき

社日という名前は知っているけれど、
お彼岸のほうが強くて「年中行事」という感覚は薄かった社日。

社日祭をやっている神社さんもあるようですが…
多分そんなにメジャーじゃないと思います。

全国的にもお彼岸に負け気味と言うか、
農業との関わりが薄い家庭が増えたことも関係してか、
社日という年中行事に対する認知度・参加度は低下しつつあるようですね。

ですが、
調べた限り、地域色が強い行事が多く、
残って欲しいと感じました。

グローバル化グローバル化と言われていますが、
地域の特色があるのが伝統行事の面白いところだと思うんです。